『ゴーン・ガール』

ほとんど劇場で映画を観ることがないんですが、たまたまそういう機会がやってきたとなると、是非とも自分の好きなジャンルを観たいなと思うわけです。世の中的には、男性向きとしては『アメリカン・スナイパー』一色というタイミングだったのですが、自分としては極上の虚構に酔いたいと思い探したところ、まだギリギリ本作をやっている劇場があったので、わざわざ都心に出向き、席数50ちょっとのちっさい劇場で観てきました。

皆さんはデヴィッド・フィンチャーという監督をご存じでしょうか? SF界で既に古典となる初作、ジェームズ・キャメロンによるアメージングな2作目というハードルの中、『エイリアン』シリーズの3作目で鮮烈なデビューを飾って以降、トラウマ必須の『セブン』、『ファイト・クラブ』『パニック・ルーム』など、とにかく男のハラハラ欲・マッシヴ欲を存分に満たす怪作を世に送り出してきた人です。この人の作品というだけで無条件に観る価値がある、というのが私見です。

で、本作ですが、行方不明になった妻を公開捜査で捜す、というプロット自体は問題ないとして、まぁこれほどまでに観ていない人に説明のしづらい作品はありません。ですが、自分のポリシーとしてネタバレなしでレビューしなければならないので、ミッション・インポッシブルをなんとかします。

先ず、予告を観て期待を膨らませましょう。観終わった方々のレビューに多くある通り、本作の予告編は巧く出来ています。これで、ストーリーの概要について事前にイメージを作っておくこと。それが結果的に、得られる成果の大きさに繋がります。

本作では犯人自体は中盤で明かされ、つまり犯人捜しが目的となるサスペンスではないことがこちらに提示されるのですが、そうなると本作の狙いは何か? 一つにサイコパスの心理・行動を追体験することにより冷たく静かな恐怖を与えること。実際その「犯行のネタバラシ」があまりに衝撃的で、ポカーンとする以外にありません。そして元の犯行よりもさらにショッキングなのが、犯人が巻き込まれたアクシデントへの「対処方法があまりに冷酷であること」、また「アクシデントをトリガーに自分の筋書をリライトしてしまう、機転の良さ」、つまり後半、サイコパスとしての比類なきレベルの高さに圧倒されることになるのです。

もう一つのテーマが「夫婦の在り方」です。クライマックスで妻から放たれる「それが夫婦というものでしょう」という言葉。世界中の夫婦が、程度の差やそれがどれだけ上手く行っているかの差はあれ、自分をある程度抑えて(あるいは押し殺し)相手との妥結点を見出しているのであって、この夫婦はまぁ極端な例ですがね…というシニカルな制作意図をビシビシと感じます。

作品内で設定された夫・妻の役どころとして、ベン・アフレックと、ロザムンド・パイクの演技は完璧です。特に本作までほぼ無名だったとも言える妻に関しては、多面性を持つ難しい役でしたが、完全に魅了されました。そしてもう一人、最期に永過ぎる枷を負った夫を想い号泣する双子の妹も、いい演技だったと思います。

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